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歯周病とプラークコントロールの重要性

美しく健康な歯を維持するために

歯の美しさは歯そのもののみではありません。
大切なのは美しくしっかりとした歯周組織。 歯みがきをおろそかにするだけで、
これは損なわれます。そして歯そのものも失われます。
ここでは歯周病の恐ろしさとそれに対するケアの有用性を探っていくことにしましょう。

監修 鶴見大学歯学部/新井高教授

美しい歯とは、いったいどのようなものでしょう?
にっこりと微笑んだときにチラリと見える真っ白な歯。キレイに並んだ真珠のように輝く歯。
もちろん、そうした部分も歯の美しさを語る上では大切でしょう。
しかし、それだけではありません。いかに“見えている歯そのもの”が美しくても、
土台たる歯肉がガタガタではいけません。美しい歯を決定づける要素として、歯肉はきわめて大切。

次のような歯肉が、美しさの要素といえます。まず内部の繊維が歯をしっかりと支えているため、
表面に無数の小さなくぼみ(=スティップリングといいます)が見えること。歯と密着していること。
歯の根に当たる部分が歯槽骨にしっかりと食い込んでいること。
つまりは、美しい歯とは、健康な歯・歯肉である。言い換えれば、ここに歯周病の介在する余地はないのです。  

では、歯周病になると、いったいどうなってしまうのでしょう?
そもそも歯周病とはいかなる病気なのでしょう?とても簡単に言うと、歯周病とは文字通り、
歯の周りに起こる病気です。歯の周りの組織=歯周組織は、左頁図のように、
外側から歯肉・歯槽骨・歯根膜・セメント質という構造になっています。

歯周病には、炎症が歯肉の範囲にだけとどまっている歯肉炎と、それがさらに進行し、
歯根膜や歯槽骨が溶けてしまう歯周炎とがあります。
健康な歯の状態では、通常、歯と歯肉はしっかりとつながっています。
歯肉溝と呼ばれるすきまはもともとあるものですが、これがさらに深まり、
歯周ポケットという状態になります。ここで、プラーク(歯垢)中の細菌が繁殖することにより、
歯周病は悪化していくことになります。

歯肉炎の主な症状としては

  • (1)歯肉が赤っぽくなり、
  • (2)腫れはじめ、
  • (3)少しかゆいような痛いような感覚があり、
  • (4)歯磨きなどの際に少し出血を伴い、
  • (5)口臭がする……

というものがあります。わずかに歯肉が腫れ、表面上は治癒したかように見えながら、
実際には、悪化していくのです。  

さらに歯周炎になると、

  • (6)冷水がしみたり、
  • (7)歯根が見えてきたり、
  • (8)歯に動揺が見られたり、
  • (9)歯並び自体が変わって見えたり、
  • (10)物を噛むと痛みが生じたりします。

歯肉炎よりも、より明らかな症状が出るため、ここに至るまで気がつかないケースも多いのです。
歯周病が恐ろしいのは、かなり進行するまで目立った症状や痛みを伴わないという点です。
今や、全世界の人口のおよそ7割の人々が、程度の差こそあれ、歯周病に罹患しているといわれています。なかには、自然に歯が抜けてしまうまで気づかないという極端な例も見受けられるほど。

それもこれも、歯周病があまりにも“静かな病気”であるがゆえです。

わずか3日で歯肉炎に1週間もあれば、立派な歯周病に。

歯周病の主な原因はプラークです。通常、人間の口中にはおよそ400種の細菌が生息しています。
その一部はいとも簡単にプラークへとなり得るのです。それは、次のような仕組みです。
歯の表面は普通、唾液に覆われています。ここに、ミュータンス菌などの細菌が付着。
口の中に残った食べかすなどを分解することで、プラークに成長。
キレイに歯をみがいてから2日も放置すれば、この状態に至ります。つまり、歯垢は垢ではなく、
数億個の細菌の塊です(歯垢1ミリグラムあたり)。いわば、水を入れた湯のみと同じ。
洗わなければ簡単にヌルヌルの水アカが付いてしまうようなもの。
歯をみがかないで放置すると、2日もすれば歯肉炎が発症し、1週間後には立派な歯周病になります。

さらに時間の経過と共に、プラークは唾液中のカルシウムを取り込んで硬くなります。
この行程を繰り返し1週間もたてば、プラークはもはや板状の歯石に!
こうなると完全に歯科医師の手にゆだねるしかありません。
ここまでの状況は、歯学部の実験で証明されています。

およそ1週間程度の、できたての歯石は柔らかくて白っぽいチーズ状のものですが、
これをもし仮に数年放置すると、恐ろしいことになります。茶シブやニコチン、鉄分などを取り込み、
黒くて硬い物質へと変容します。ここまで放置するのは相当なことですが、きっかけは単に1週間程度のこと。歯周ポケットを中心に、プラーク中の細菌は大いに繁殖します。

これは、歯を失う原因となるだけではありません。細菌は、唾液や血液に乗って、身体全体に行き渡ることになります。心臓や腎臓など、他の臓器の疾患や糖尿病などを引き起こすおそれもあります。

逆に、これらの疾患が歯周病の危険因子にもなり得るわけです。

わずか1週間程度できわめて簡単にかかってしまう。
きわめて“簡単な病気”にもかかわらず、厳しい結果を招きかねない歯周病。
もし仮に、かかってしまった場合、いかにして克服すべきか。

プラークコントロールの基礎知識 こうすれば「バイバイ歯周病」

歯周病にきわめて簡単になってしまうことがよくわかりました。
しかし、一度、歯周病になってしまった場合、どうすればいいのでしょうか。
なるのは簡単ですが、果たして治癒することも簡単でしょうか。
実際の歯科医院での治療のプロセスを見ることで、歯周病への対処法を考えてみましょう。

はじめに断言しておきます。歯科医院に行くことは絶対必要です。
基本的に歯周病には原因の除去療法が適用されます。
つまり原因となるプラークを付きにくくすることで、歯周病はかなりの割合で治すことができるわけです。この、歯にプラークが付きにくくすることをプラークコントロールといいます。

ある調査によると、歯みがきを習慣とする人は全国でかなり増加しています。
しかし、歯周病自体は減っていません。つまり、正しいプラークコントロールは浸透していないことになります。

そこで歯科医師の協力が必要になるわけです。

まず、歯科医院に行くと、行われるのはプラークコントロールへの動機付け。
プラークとは何かを教わり、プラークを染色液で染め出し、いかに歯がみがけていないかという現状を知らされます。
そして、歯科医師あるいは歯科衛生士による正しい歯ブラシの選び方と歯みがきの仕方のレクチャーを受けるのです。

理想的な歯ブラシは、一概には言えませんが、一例としては毛束が緊密でなく3×7列。柄がまっすぐで毛は硬めなもの。
毛先を歯と歯ぐきの間に押し込むようにして微細に振動させる……ですが、これはあくまで一例。
きちんと歯科医師の指導を受けてください。

一方で、そもそもプラークがたまりにくくするための食事の指導が行われる場合もあります。
理想的な食物は、適度に固くて噛む回数を要するもの。繊維質が豊富なもの。
歯を強くするためにカルシウムを含んだものなどなど。
逆に、う蝕が起こりやすい糖分を多量に含んだものや、柔らかすぎるものはあまり好ましくありません。

こうした指導を1〜2週間おいて繰り返し受け、改めて染色液でプラークの染め出しをします。
指導どおりのオーラルケアができていれば、実際、プラークは劇的に減っていることになります。
そうすると、歯みがきの有効性が自覚できるというもの。
ひいては、日々、きちんとケアする時間を持つようになるわけです。ここからさらにステップアップ。

歯みがきだけでは取れなかった歯間のプラークをデンタルフロスや歯間ブラシで除去するのです。
これをマスターして初めてセルフケアの完成。
“きちんと歯みがきができる”というのは、この状態のことを指すのです。

ここまでくれば、あとは歯科医師によるスケーリング(針状の器具で歯周ポケット内の清掃、歯ブラシでは取れない歯石の除去)で、歯周病対策もまず完了。

あとは定期的に歯科医院に通い、日々のオーラルケアを怠らないこと。
これで、歯周病、恐れるに足らず、でしょう。

歯はこんなにも簡単に汚れてしまうのです

たとえば、お部屋ならば、仮にお掃除が1週間に1回であったとしても、さほど問題ではないでしょう。しかし、歯の場合、大変なことに!お部屋にたとえれば、クモの巣まみれ、ホコリだらけ。こんなお部屋にアナタは耐えられますか?こんなお口にアナタは耐えられますか?

プラークコントロール指導の一例

ex.1正しい歯ブラシ選び

毛束は3×7列。柄は比較的まっすぐ。毛の先端部分にだけ歯みがき剤をつけ、小刻みに振動。歯2〜3本あたり3振動×10回はみがきたい。

ex.2理想的な食物の指導

柔らかすぎるもの、砂糖を多量に含んだものはNG。繊維質やカルシウムをたっぷり含んだ食品。しっかり噛める食品をチョイスしたい。

ex.3歯間ブラシの使用

いかに理想的に歯ブラシが使えても、どうしても歯ブラシだけではとれないものがある。歯と歯の間に関しては、歯間ブラシやデンタルフロスで。

ex.4歯石を除去

セルフケアのやり方を正しく理解し、十分な効果を得たならば、プロの出番。最終的に歯科医師が、セルフでは除去できない部分をチェック。