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たばこは歯周病の最大のリスク因子です〈2003.7.15掲載〉

歯を失ったり、奥歯の支えが十分働かないと、脳の特定の部分が萎縮することがわかっている。
そこは、記憶に重要な海馬を含む側頭葉内側部、そして計算や思考空間認識の前頭・頭頂連合野である。これらの領域は、アルツハイマー病で脳の萎縮する場所でもある。

 先頃、世界保健機構(WHO)が発表した2003年世界保健報告によると、日本は男女ともに平均寿命と健康寿命の双方で世界一であった。平均寿命は男性78.4歳、女性85.3歳、健康寿命は男性72.3歳、女性77.77歳である。無論、長寿は一般的に貢ばしいことである。

 しかし、健康寿命から平均寿命までの期間は、疾病やけがにより日常生活が欠きく損なわれる期間を意味することに留意しなくてはならない。痴呆はこの期間における最も重要な問題の一つであり、痴呆高齢者の介護においては、経済的負担もさることながら、相当の構神的負担が介護者に課せられる。「老老介護」による「介護疲れ」の果ての悲しいニュースを耳にすることも希ではない。

 痴呆は脳血管障害など様々な疾病に起因するが、なかでもアルツハイマー病に代表される脳変性による
痴呆は未だ不明な点が多い。しかしながら、アルツハイマー病の早期発見・早期診断を目的とした画像診
断学は着実に成果をあけており、アルツハイマー病との境界状態である軽度認知障害患者では後部帯状回の脳内代謝量が低下することされることが近年明らかにされている。

 また、原因抽出や予防の観定から複数の疫学調査が実施され、アルツハイマー病の危険因子として年齢、性別、頭部外傷の既往などが挙げられている。なお、「危険因子」とは保有者が有意に高率に確患する要因であり、因果関係の解明は必要ではない。これらの疫学調査の中で、「歯の喪失がアルソハイマー病の危険因子の一つである」と報告した調査があったことは注目に値する。

 一方、歯科領域でも歯数や義歯使用など[口腔状能皿と痴呆の関連を示唆する疫学調査がいくつか報告され、さらに迷路を用いて空間記憶学習能を調べた動物実験では、臼歯の抜歯や歯冠切除による能力低下が確認されている。

 平成14年度に東北大学大学院歯学研究科などは共同で、高齢者の組合的な機能評価を目的とした大規模な地域高齢者の健診を実施した。この健診のデータから、口腔状態と痴呆発症の関連について興味ある知見を得たので紹介したい。

 健診を受診した高齢者1167名を認知機能検査であるMMSEの点数(30点満点)をもとに、正常群652名(28点以上)、軽度認知障害疑い群460名(22〜27点)、痴呆疑い群55名(21点以下〕の3群に分類し、各群の平均現在歯数を比較した。各群の平均現在歯数は、それぞれ平均14.9本、13.2本、9.4本本でありMMSEの点数が低い群はど有意に現在歯数が少ない傾向を認めた。さらに、歯の保有数と脳萎縮の関係を検索するために、MRI撮影を希望した高齢者から無作為抽出した195名のMRI画像を用い、歯の状態(現在歯、健全歯、咬合支持域の数)と脳容積との相関を脳画像処理ソフトにて解析した。

 その結果、歯や咬合支持域の数の減少に伴って、記憶と密接に関係する海馬を含む側頭葉内側部や、計算や思考、空間認識などの高次機能と関連する前頭・頭頂台野に相当する領域の容積が有意に減少することを確認した(図)。これら一の領域はアルツハイマー病で萎縮することが多数報告されている。

 以上の知見は、高齢者における歯の保有数と痴呆発症の相関について科学的根拠を示したものである。因果関係や詳細なメカニズムの解明には今後さらなる研究を必要とするが、歯と全身の健康との関わりにおいて、新たな領域が開拓され始めたた言えるであろう。