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再生医療の胎動 閉塞歯科界打開の旗手〈2003.5.22掲載〉
日本歯科新聞 2003年5月20日号より

世界が注目するフロントランナー
■行き詰まる歯科界 再生医療に「希望」

 「名古屋大学大学院の上田実教授と日立メディコが人口歯胚を共同開発」。昨年6月4日の日刊各紙がこの話題を大きく取り上げた。10月には同大医学部付属病院に国内初の「再生歯科外来」が設置され、歯科における再生医療が実用化へ向けて動き始めた。
 歯科医師の増加にともなう歯科医師1人当たり患者数の減少、診療報酬点数の初の引き下げ、また被用者保険本人3割負担の実施など、21世紀を迎えた歯科医療界は行き詰まりを見せている。
 こうした閉塞した歯科界のなかで、再生歯科医療が持つ意義について、上田教授は「歯科界は再生医療に希望を持つべきです。再生医療は歯科界に変革を起こすでしょう」と将来性を指摘する。
 14年度の「21世紀の歯科医学・医療―歯科医療からみた再生医学」をテーマに開かれた日本歯科医学会学術講演会でも、上田教授は「現在の医療技術は限界が見えている。画期的な進歩がなければ、早晩大きな壁に突き当たってしまう」とし、今後の歯科界に進歩を生むものとして「再生歯科医療の実用化」を強調した。
 注目度は歯科の枠組みを超え、「日経バイオビジネス」(2002・7月号)では「開幕!再生歯科レース」と題し、熾烈な研究競争を繰り広げる再生歯科医療が「再生医療の最初の巨大市場」として、またとないビジネスチャンスを狙う全国企業に情報発信された。
 教授自身も「歯科は再生医療のフロントランナーで、世界中が成功に注目しています」と自負する。

■そう遠くはない実用化の道のり

 待たれるのは実用化だ。
 教授の研究は、すでに基礎研究、臨床研究を終え、企業への技術移転の段階にある。
 今後は、臨床治験を行い、厚生労働省の承認を得ると、産業化され、実用化となる。
 その時期について上田教授は、「計画では2005年に技術移転が終わり、2006年には歯周組織、2007年には再生歯胚の出荷が始まり、再生歯科医療の歯科医院での実用化が始まる予定です」と計画を語った。
 教授が考える実用化の時点とは、再生歯科医療が産業化され、工場から歯科医院への再生組織の出荷が始まる時点。
 つまり、ごく少数の歯科医師が治療を始める時点を指すが、教授は「1人の歯科医師が始めた途端、猛烈な勢いで、歯科医院での再生医療は広がってゆくでしょう」と前途の光明を語る。

■歯周病と高齢化 潜在患者は莫大

 教授が「希望を持て」とする背景には、再生歯科医療を待つ潜在患者が多いことが挙げられる。
 「重症歯周病患者は現在3000万人、そのうち2割が治療法がなく抜歯をしている。試算すると、その数約600万人です。糖尿病の潜在患者300万人と比べても、その数は膨大です。こんな医療は他にはありません」。再生医療が歯科医院にとって患者拡大に確実につながるという。
 また、東京医科歯科大学大学院の石川烈教授は「現在国民の35歳以上人口の7割が歯周病で、さらに1割が重症歯周病患者です」と患者の多さを指摘する。
 総人口1億2744万人のうち、35歳以上人口は7250万人(総務省総計局調査、平成14年10月1日現在)。ざっと試算しただけでも歯周病患者は約5000万人、重症歯周病患者は約700万人になる。
 さらに石川教授は、日本が置かれる超高齢社会に再生歯科医療の必要性を強調し、「高齢者は歯の脱落に義歯やブリッジなどでしか対応できなかった。しかし再生医療で、自分の歯で美味しい食事できるようになれば、高齢者のQOLは向上し、より健康な高齢期、終末期を生み出します」。
 上田教授が考える歯科界への波及効果はこれだけではない。歯科医学の教育改革や歯科のイメージアップ、新たな雇用創出など、あらゆる形で変革が起きるという。
 「歯科界にとってこれ以上のものはしばらくでてこないでしょう」。