突撃!ニュー健診探検隊が行く
ミッション3
「歯科人間ドック」でわかる虫歯と歯周病のなりやすさ
(12月2日発売 日経へルス 2001.1月号)
口の中という未知なる小世界。
そこに生息する歯周病菌の活発さを
目の当たりにした私。
気分はミクロの決死隊である。

歯の治療歴は乳歯のころからという筋全入り。はにわきみこ34歳。大口を開けて笑えば銀歯がギラギラ。歯磨きに問題があるのか、はたまた「口内環境」が虫歯を誘発しているのか。
思い切って「お口」の間題点を白日のもとにさらしてみる。
第3回目は「今ある歯を大切にすること」に重点をおいた歯科健診にチャレンジ!
文/はにわきみこ 写真/乾芳江 イラスト/吉岡愛 デザイン/近江デザイン事務所
実は私は子供のころからムシバ女王である。2本の前歯が差し歯なのも、乳歯のころからのムシバが原因。神経を抜いて削って詰めて差して……。身の毛もよだつ歯科医通いの日々がよみがえる。
なのに今回の健診探検隊は「歯科人間ドック」だという。虫歯や歯周病をチェックし、さらに虫歯のなりやすさまでわかってしまうらしい。私のお口の中の恥ずかしい現実が赤裸々に暴かれる。怖いモノなしの私でも、この検査だけは気が進まない。
私にとっては“いじめ”にも等しいこの企画を立てたのは、もちろん編集部K氏(37歳男性)。これまで動脈硬化や自律神経の検査で不健康ぶりを遺憾なく発揮してきた彼だが、歯には自信があるようだ。なんでも「生まれてから一度も虫歯になったことがない」のだそうな。でもハミガキは、「普通にチャカチャカやってるだけ」だという。なのになぜ虫歯ができない!この違いはなんなの?う〜ん、世の中不公平だわ。そんなことを考えながら、私は重い足取りで「丸の内健口センター」に向かった。
ガムをかんで口液チェック
「丸の内健ロセンター」は、地下鉄を降りてすぐのビルにあった。隣にある「国際ビル歯科」の分室だ。治療は歯科医院で、検査と予防は健口センターでと、役割を分けているのだ。「従来の歯科治療には限界があります。悪い部分を削除して人工物に差し替えても、しょせん、生まれつきの歯の良さにはかなわない。だから、自前の歯を悪くしない予防法を学んでほしいのです」というのは、院長の相良俊男先生。
削って埋めるという対症療法ではなく、自前の歯を大切にするやり方。その入り口として、まず口の中をチェックするわけだ。
最初は口臭測定。これで歯周病がわかるのだという。口を閉じて息をためてから、機械にフーッと吹きこむ。口臭の数値がデジタル数値で表示されていく。私の数値はけっこう高い。ううっ、思わずお口すっきり系のミントをほおばりたくなる。次は唾液検査。透明なガムをもぐもぐとかみ、わいてきた唾液をだらーっと、カクテルグラスのようなビーカーに集めていく。無言でせっせと5分間ガムをかんで唾液を採取し、分泌量をチェックするのだ。『唾液には、口の中をキレイにする消毒の役割や、軽い虫歯を自然に治してしまう『再石灰化』の働きがあります」と、歯科衛生士の石崎さん。だから唾液の量は多い方がいい。また、粘度か低いさらさら唾液の人ほど虫歯になりにくいのだそうだ。私は、まあ人並みの量が出た。
ショック!うごめく歯周病菌
最大のショックは、「顕微鏡検査」。プラーク(歯垢)を採取して顕微鏡にセットすると、モニター画面に、口の中で生息する虫歯菌と歯周病菌がうごめく像が浮かび上がるのだ。菌はぐにょぐにょと塊を作ったりうねうねと単独で泳いでいたりする。画面いっぱいに、ぐにょぐにょとうねうねが映し出される。私はこんな生き物と一緒に暮らしているのかぁぁぁ!一瞬気が遠くなる。
参加者4人全員が自分の菌を見てみた。菌を一番たくさん飼っていたイラストのY嬢は、自分の検査が終わった後、泣きそうな顔でずっと歯を磨いていた。わかる。だって私もすごいショックだもの。一方、菌が少なかったカメラのI嬢と編集K氏は涼しい顔だ。「日ごろどれだけ、菌を減らす生活ができているかが間題です」と相良先生。ハミガキでまんべんなく磨けることはもちろん、糖分を頻繁にとると口の中が酸性になりやすく、それだけ菌が増えやすいという。そもそも口の中の菌は、子供のころに親から、同じスプーンを使ったりしてうつされることが多いのだそうだ。そのときにたちの悪いのをうつされると、一生ついてまわるという。「そういえばうちの親も歯が丈夫だったな」とK氏。
今ある歯を大切に
次は歯茎をチェック。歯の付け根をちくちく刺激し、弾力で歯周病の危険度を調べる。最後は、赤い色が付く磨き残しチェック剤で、今の歯磨き習慣に対するアドバイスを受ける。
ひと通り終わって、私の口からは多くの間題点が浮かび上がった。未治療の虫歯と歯周病があり、菌が多く、ハミガキでも磨き残しがあった。ある程度予想してたとはいえ、ヒサンな現実に肩を落とす。とほほ。がっくり来てた私に、相良先生が優しいお言葉をかけてくれた。「まだ健康な歯がたくさんあります。死ぬまで自分の歯でかめるように、今後のケアをしっかりしていけばいいのです」。そう、悪い所の点倹だけではなく、残っている良い所を生かす道を考えるのが、真の予防医学!相良先生、いいこというわ。男前だし。しかし、虫歯になりにくい人は、口の中に悪い菌が少ないのだと実感した。K氏のように不健康な暮らしでも、菌さえ減らせば歯はけっこう丈夫でいられるのだ。自前の歯が虫歯や歯周病でダメになる前にチェックしておくのは、有意義ですぞ。
検査の仕組みと目的
歯科人間ドックは99年にスタートした制度。虫歯や歯周病など口の中の病気を検索し、唾液や口腔内の菌をチェックすることで病気のなりにくさを判定。予防法の指導も行う。所要時間は約1時間。基本検査は2万円。全国で80余りの歯科医院がドックのメニューを提供している。ドック実施医院のリストは歯科人間ドック学会サイトで。
今回検査を受けた「国際ビル歯科」は、ドック専門スペースを備える歯科医院。「できるだけ削らない、抜かない」をモットーとし、患者一人ひとりの状況に合った予防法の指導に力を入れている。
はにわの検査結果
今回は、はにわさんが歯科人間ドックのメニューを一通り体験。ほかの3人は下表に挙げた項目をチェックした。「虫歯菌」は唾液1ml中のミュータンス菌の数。0〜10万個が「安全」、10万〜50万個が「要注意」、50万〜100万個が「危険」、そして100万個以上は「とても危険」と評価される。はにわさんとイラス卜のYさんは「とても危険」の領域に入ってしまった。
さらに口臭検査でも、はにわさんとイラストのYさんが危険領域。カメラーさんと編集Kはどちらも良好だった。「通常、中年期にかかった男性は成績が良くないのです。Kさんは予想外の好結果ですね」と相良先生。
主な検査の内容
唾液の検査
唾液の分泌量、ネバつきなどを調べる。虫歯菌への抵抗力がわかる。
虫歯菌検査
2種類の虫歯菌の数を調べる。虫歯のなりやすさがわかる。
歯周病検査
ポケットの深さ、出血などを1本ずつチェック。顕微鏡で歯周病菌を調べる。
口臭検査
揮発性硫化化合物という悪臭成分を測定。歯周病進行の目安になる。