“歯の後進国”日本に新時代到来
あなたの歯はもっと美しくなる!

(2000年7月1日 VOGUE 7月号)

毎日歯を磨いているにもかかわらず、虫歯の人口が世界でも極めて高い日本。一方、北欧では今や、虫歯は“きわめて珍しい病気”とされている。「食後や寝る前に必ず歯を磨きましょう」と子供の頃から教育され、実践しているはずなのに、なぜ私たちの虫歯はなくならないの?
治療だけが目的ではない、怖くない歯医者さんが登場
生活習慣の違いが生んだ虫歯大国ニッポン
映画『プリティ・ウーマン』でジュリア・ロバーツ演じるヴィヴィアンがデンタルフロスを使っていたシーンを、覚えているだろうか。歯ブラシのほかに、歯と歯の間の汚れを落とすデンタルフロスや歯間ブラシを使うのは、欧米ではごく日常的な風景。日本では浸透していない生活習慣だ。ところがこれこそが、日本人に虫歯や歯周病が多い原因のひとつと言われている。そしてもうひとつ、歯にまつわる生活習慣として日本に定着していないものに歯列矯正がある。歯並びが悪いと歯のブラッシングがしにくくなり、歯の健康を損ないやすくなる。しかし、日本では歯列矯正をする人はそれほど多くはない。対して、アメリカでは古くから歯列矯正は一種のスティタスとされている。これもやはりなじみのあるハリウッド映画のセリフから伺える。例えば『カサブランカ』(42年)で、「10年前、君は何をしていた?」と間かれたイングリッド・バーグマンは「歯列矯正をしていたわ」と答えるし『がんばれ!ベアーズ』(76年)では、主人公の少女が野球の賞金で「まず最初に矯正歯科医ににかかるんだ」と言う。歯列矯正はそれほど身近なものなのだ。このように、欧米では当たり前の歯の習慣が日本には定着していないことが、残念ながら日本を“歯の後進国”とさせてしまっているようだ。さらに加えて、歯科医院のとらえ方が違うことも大きい。幸いなことに日本では健康保険制度の充実もあって、病院の治療費が安い。だから知らず知らずのうちに、歯科医院は“痛くなった歯を治療するところ”だと思っている人が多いようだ。一方、欧米では治療費がかなり高いこともあり、歯科医院は虫歯や歯周病を“予肪するために行くところ”とされている。ブラッシングがうまくできているか、小さな虫歯はできていないか、歯周病が進んでいないかなどを定期的にチェックしてもらうのだ。
治療からメンチナンスへ。削らない歯医者さんの登場
松田聖子の再婚をきっかけに審芙歯科が一躍注目を集めるなど、最近では日本でも口もとの美しさへの意識が高まりつつあるようだ。しかし、いまだに歯医者さんはやっばり怖いところだろう。治療は痛いし、麻酔に抵抗がある。独特の音や臭いがあってなじめないし、急に治療が始まったらいやだ、とためらう人は多いに違いない。では、歯をきれいにする、あるいはチェックすることを目的とした、削らない、つまり治療しない歯医者さんなら、どうだろう。最近このような新しいタイプの歯科医院が登場しているのだ。東京・お台場のヴィーナスフォートや伊勢丹新宿店などに最近オープンした『ティースアート』。「麻酔をしない」「歯を削らない」ことを前堤とし、ショッピング・エリアに立地。所要特間約20分のクリーニングやホワイトニングを基本メニューとして揃えた歯のクリニックだ。椿智之院長は次のように話す。「歯を健康的に美しく保つためには、プロょる定期的なチェックを受けることが大切です。でも従来の歯科医院にありがちな無機質な雰囲気や治療にかかる時間、費用などがその障害になっていることも事実。歯科医院に対する抵抗成をできるだけ取り除き、いかに通いやすい雰囲気を演出するかは歯科医院にとって欠かせないポイントですね」
買い物に行くついでに歯を美しくする、そんな気軽な“ティース・サロン”。「歯医者に行かなくちゃ」と構えることなく、美しい歯への道のりをたどることができるのだ。
歯は内臓の鏡。美しい歯は全身の健康を約束する
歯が美しいことは、実はただそれだけにはとどまらない。東京千代田区の国際ビル歯科の相良俊男院長は「大げさではなく、口の中の健康は幸せのベース」と言い切る。「人と食事に行くのが苦痛、口臭が気になる、歯のすきまが開いていて笑うのが恥ずかしいなど、口の健康を失うと消極的になって、人間組係も変わってしまうんです」さらにいえば、歯や歯肉に病気があると全身に影響がある。
「寝たきりのお年寄りが肺炎を起こしやすいのは歯周病菌等が大きな原因だといわれていますし、歯周病は狭心症や心筋梗塞、流産や早産との関連性も報告されています」と相良院長。虫歯や歯周病は突然なるのではない。普段の生活が作り上げる慢性の感染症なのだ。今は若くて元気でも、口の中の異常を放っておくことはやがて「楽しくない」老後につながっていく。歯の美しさが体調だけでなく、その人の内面や身体全体の健康状態にも影響を及ぼすことを考えると、単に歯医者嫌いといって済ませてはいられない。歯科医院が変わりつつある今、ようやく日本人が“美しい歯”の意味を考えられる時代がやってきたのだから。
笑うときに口をおさえる日本人。それは自信のなさの表れ?
歯の大きい人、小さい人、歯並びのいい人、悪い人、出っ歯の人、受け口の人などなど、歯の構造はひとりひとり違うものだ。歯の大小は、個性として認められるかもしれないが歯並びに関しては、美しいに越したことはない。そう誰もが思っているはずだ。「といって歯列矯正の習慣がなかった過去を嘆いても始まらない。ようやく今、日本の歯科治療は新時代に入ったのです。改善するべき点を一歩ずつ改めていくことこそが重要だと思います」と椿院長。それにはまず、白分の歯がどういう状態にあるのかを把握することから始めなければならない。普攻通っている歯科医に相談するのもよいだろう。『ティースアート』のような気軽に入れるサロンに行ってみてもいい。あるいは最近堵えている“歯科人間ドック”を受けるのもまたひとつの方法だ。「“歯科人間ドック”なら、歯はもちろん、歯の状態が及ぽす影響を徹底的に調べることができます」と相良院長。口臭や虫歯の原因ばかりでなく、長年悩んでいた肩こりが、実はかみ合わせの悪さから起きていることが判明したり、喫煙の有無、食べ物の趣味など歯を通して、生活習慣や性格までもが、わかってしまうという“歯科人間ドック”。歯の不調を感じている人にはおすすめだ。そうして自分が理想とする歯に近づくためのステップを、専門家に相談する。これこそが新しい歯科医との関係なのだ。歯とは不思議なもの。歯から性格までがわかるというように、診察を受ける時の体調や精神状態が、その治療効果に影響を及ぼすという。それほど歯のケアは繊細でパーソナルなものなのだ。だからこそ安心して任せられる主治医のもとで行いたい。歯のセルフ・ドクターを探すことが、美しい歯への近道であるともいえるのだ。
もはや治療ではない。歯科医は“予防”と“美”のために選ぶ。
現在、日本には約9万人の歯科医がいるといわれている。歯科医の増加と少子化によって歯科医院の競争はますます激化。その結果、歯科医院は今、個性の時代へと入った。
最近、審芙歯科、矯正歯科など、専門分野を明確に掲げる歯科医院もあれぱ、『ティースアート』のようにスタイルにこだわる歯科医院もある。プライバシーを第一と考える完全個室の歯科もある。それらの共通点は虫歯治療ではない歯科医療に力を入れていること。つまり口の中の状態のチェックを重要視する歯科が増えているのだ。歯科医院はもはや、痛い歯を治してもらうためだけの所ではない。選択肢が広がった今、私たちは「歯を白くしたい」「矯正したい」「治療費を安くすませたい」といった個々の希望に合った歯科を選ぶことも可能だ。歯の悩みが特別ない人なら、「雰囲気が入りやすい」「先生がハンサム」「会社のそばにある」「夜遅くまで診療可」……、歯科医院を選ぶきっかけは何でもいい。とりあえずドアをたたいてみよう。そして自分の歯を一番いい状態にキープし統けるためのケアについて、考え始めてみてはどうだろう。歯を美しくすることは、歯を一生健康にに保つことにつながる。楽しく話すのも、ロマンティックに愛を語るのも、あなたの口。おいしくモノが食べられるのも健康な歯があればこそ。21世紀、口をおさえることなく堂々と笑う、美しい歯を持つ日本女性が増えることは、間違いない。
◆口の中のすみずみまでチェック
歯のための“人間ドック”
国際ビル歯科内の『丸の内健口(けんこう)センター』の場合、歯肉や粘膜などを調べる口腔検査、歯やあごを診るX線検査、歯並びとかみ合わせの検査のほか、虫歯菌2種類と唾液、口臭、磨き残しもチェック。正しい歯の磨き方も指導。所要時間は約1時間で2万円。